NPO法人 日本野鳥の会鳥取県支部

カワウ繁殖地訪問記(2010.5.31 鳥取市湖山池団子島)

 湖山池の団子島は約30年ほど前から冬場のカワウのねぐらとなっています。カワウの落とすフンのために木が枯れ表土が流出して岩がむき出しになっている部分もあります。昨年からカワウが夏も居続けて繁殖しているとの情報があり、このたび実態調査に行ってきました。

 (1)猫島
  調査に使用した船外機付きのボートは、湖山池の漁業問題に詳しい、鳥取市会議員で湖山池漁協の専務理事でもある児島良さんに提供していただきました。(児島市議には実際の運転も担当していただきました。恐れ入ります!)
 5/31日 AM10hに湖山池東岸の桂見近くの公園から出発。調査員は当支部の福田支部長、加藤さん、私(下田)の三名です。
 最初に、団子島と並んで冬季のカワウのねぐらとなっている猫島に行ってみました。松が枯れるので数年前に地元の人がテグスを張ってからは、カワウはあまり来なくなったようです。
 

猫島全景、左に見える青い橋は青島への橋。

 島に祭られている神社は、昭和11年に琵琶湖の竹生島の弁財天の分身をお迎えしたものとのことです。島の片隅に小さな石像が立っているのを以前から双眼鏡で見ていたが、その正体は女性の形をした弁天様でした。
 ところで、琵琶湖の竹生島といえばカワウの大繁殖地!鳥取県など西日本各地のカワウも元々は竹生島生まれではないかと言われているので、弁天様がカワウを湖山池に呼び寄せた?



 


 島に上陸。松の木にアオサギが営巣していたが、不満そうに「ギャー」と叫んで去って行った。フンで汚れているものの比較的きれいな鳥居。まずは弁天様に調査の安全を祈願。









ふと地面を見ると、アラマ!、鳥の卵の殻があちこちに散乱している。
カラスがカルガモの卵を盗みここで割って食べたようだ。









そして何と!鳥居のそばの草むらではカルガモがじっとしゃがみこんでいた。どうやら抱卵中らしい。その巣から1mほど離れてもう一羽抱卵中。近づいて写真を撮ってもじっとしていて全く逃げない。立ちあがったが最後、卵を奪われることをカラスとの死闘の中で経験したのか?けなげであっぱれな親だ・・・。刺激するとかわいそうなので早々に立ち去った。
それにしても、この島はめったに人もこないので、カラスがいなければカルガモの繁殖には理想的な場所だ。




 結局、猫島ではカワウの繁殖の痕跡は見られず。5/29のねぐら入り調査でも、カワウは一時的に立ち寄りはしたものの日暮れ時には一羽もいなくなったとのことだった。

(2)団子島

 続いて調査の本命の団子島へ。

高い木が一本もなく、地肌が露出している。典型的なカワウのネグラの風景。










島の南側に回ると・・・、ありました!カワウの巣発見。
左の写真は小さすぎて判然としないが、赤い丸で囲んだ所に巣があります。全て枯れ木の上。
巣は全部で10個。内、5個には親鳥が各1羽ずつ座り続けていて、我々が直下まで船を寄せても逃げない。どうやら抱卵している模様。
 児島さんの話、「去年は巣は5個程度だったが、えらい増えとるナー」。




 結局、巣は島の南面のみにあり他の場所にはなかった。加藤さんは島に登るための登山準備をしてきたとのことであったが、水上から巣を確認できたので引き上げることにした。仮に上陸したとしても、巣の見える位置(たぶん、高い所の巣は背の高い竹にさえぎられて見えない)まで登るには猛烈な藪と格闘しなければならない。地面はフンだらけだし・・。


ついでに団子島西方200mの所にある小さな岩礁である鳥ガ島(我々は沖の島と聞いていたが鳥ガ島が正しいとのこと)にも立ち寄った。昼間、カワウが10羽程度この島で休んでいるのをよく見かける。フンで真っ白。児島さんによると、ここ数年で急に木が生えてきたとのこと。







調査も終わったので、帰りついでに青島に次ぐ大きな島、津生島にも立ち寄った。この島には二、三年前まで鹿が一頭住んでいたが最近見ない。どうやら泳いで本土(?)に帰ったのではないかとのこと。湖山池の石がま漁の石がまの石は、この島から切り出して運んだそうだ。







調査終了しホッとしている我らが支部長の雄姿。
船外機を操作しているのは児島さん。
この日は空は晴れ、湖面を渡ってくる五月の風が涼しく心地よく、何とも気分の良い一時間の船旅であった。






 今後の湖山池漁協のカワウ対策の予定だが、団子島のカワウについては駆除の許可を取った上で、散弾銃で駆除することになるだろうとのことであった。野鳥の会の会員の一人としては複雑な気分。なんとかカワウと人間活動との折り合いをつける線、保護と駆除との境界線を見つけてほしい。当面はそのためのデータを取ることに励みたいと思いました。

以上(記:下田 2010.6.4)