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 ・はじめに  (2013/02/21)

 
湖山池への塩分導入事業が平成24年度より開始されました。この事業によって過去400年以上にわたってほぼ安定的に維持されてきた池の生態系は激変し、われわれ鳥取県民・鳥取市民が長年慣れ親しんできた湖山池の生物たちはすでに絶滅したか、あるいは死滅の危機に瀕しています。
  鳥取県と鳥取市が共同で推進しているこの事業は、前世紀の経済成長にともなう環境破壊への深い反省から近年とみに高まってきた生物多様性尊重の精神に真っ向から対立するものです。国際間の「生物多様性に関する条約」については、日本は20年前の1993年に締結し、現在までのこの条約の実施面における最大の財政的支援国です。このことは我々日本国民の誇りでもあります。
 その条約の第一の目的は「生物多様性の保全」です。この条約の精神にのっとり、鳥取県のような小規模な自治体でも自前で県内の絶滅危惧種を網羅したレッドデータブックを2002年に策定し、2012年にはその改訂版を発行したのです。しかるに、このレッドデータブックを作った自治体自らが、多額の県費を費やしてその絶滅危惧種を、湖山池に生息してきたカラスガイを始めとする多様な生物種を絶滅させようとする愚行を犯すとは、このレッドデータブックの作成・発行に協力してきた私たち県内の自然愛好者の誰が予想できたでしょうか。
 経済的効果を目的として、自治体自ら実施する事業でそれまで生息していた多数の生物を死滅させる環境破壊を行なったことは、高度成長期の1970年代頃まではよく見聞きしましたが、今世紀に入ってからの国内での例は寡聞にして知りません。この鳥取県の湖山池塩水化事業こそ、国内では実に久しぶりの自治体による環境破壊の希少な悪例となるでしょう。鳥取県民としては実に恥ずかしいことです。
 しかもこの事業自体、その経済的効果さえも全く不透明なままです。今年度だけで県と市の合計で数億円の費用をつぎ込んでいるが、湖山池の今年度の漁獲高はほぼゼロのようです。唯一の効果として、県はこの事業で池の水質が良くなったとさかんに宣伝しているが、単に水質を改善するだけなら、湖山川の水門を降水量や潮の干満に合わせて小刻みに操作しながら海水を導入するだけでもある程度の水質改善ができるはずです。既存の水門を操作して千代川から切り離される1983年以前の塩分濃度程度にコントロールしていれば、池周辺での稲作は過去数百年来と同様に継続可能であり畑作転換に伴う数億円の補償金や農業用水確保費用は不要、年間数百万円程度の水門管理費だけの予算で十分だったのではないでしょうか。この点の検討が十分になされたのかどうか、実に疑問です。
 また県と市は水質改善がこの事業の目的と主張していますが、昨年春の段階ですでに池の底が見えるほど(湖山池の底が見えたことは千代川に直結していた当時でも無かったこと。)まで水質が十分に改善されていたにも関わらず、昨年秋に池の塩分濃度が海水の半分近くに上昇するまで水門を開きっぱなしに放置していた行為の意図が全く理解できません。故意に池の生物を死滅させようとしていたのか、補償金を払うための目に見える口実を作りたかったのかとさえ感じます。
 費用対効果の面から見れば到底実施すべき事業ではないことや、今まで生息していた池の魚貝類や植生をほとんど全部殺して生物多様性を破壊したことは隠ぺいしておいて、水質が海水なみに良くなったと言いたいのでしょうか?
 実はこれだけ海水を入れたにもかかわらず、COD(化学的酸素要求量)、全窒素、全リンなどで測られる水質には未だに特に改善傾向は見られておらず、2013年3月現在、CODは過去五年間の平均値の2倍と、むしろ数値は悪化しています。水中の窒素量も3月のデータでは過去五年間の平均値の五割増しとなっています。

 江戸時代から続いてきた伝統の石ガマ漁もこの冬は中止となりました。多額の補助金・補償金をつぎ込んで残ったのは破壊された環境と伝統、そして子供や孫やまだ生まれぬ将来世代への重荷となる国の膨大な借金をさらに増やしたことだけです。湖山池を長年にわたり持続可能な生活の場とし、いつくしんできた私たちの先祖や父母に対して、この今の惨状をどう説明すればいいのでしょうか。一時の欲で湖山池を海に変えてしまって、あの世でご先祖様に会わせる顔がありますか? 欲にかられて田んぼを池に変えてしまった伝説の湖山長者のように、きっと天罰がくだることでしょう。
 このページを設置した目的は次の三点です。

  @塩水化事業により大きく変化してしまった湖山池の生態系の現状を確認し、その現状を広く世の中に伝えること。
  Aこの無意味な事業を即刻中止させ、過去数百年間維持されてきた従来の湖山池の環境を回復し、多様な生物種を再びよみがえらせること。
  Bこの不透明な事業の実施が決定された経緯を明らかにしその原因と責任を明確にして、このような時代錯誤の事業の再発を防ぐこと。

 私たち日本野鳥の会鳥取県支部のメンバーは、野鳥以外の生物についてはほとんど素人です。湖山池の植物、魚、貝、昆虫等の変化を観察されたデータ・写真があれば、このページに随時掲載します。このページを訪問された皆様からのたくさんの投稿をお待ちしております。
 この塩水化事業に関する意見も広く募集します。反対意見のみでなく、塩水化賛成の意見でも結構です。ただし、賛成・反対ともに、ある程度客観的な事実(観察データ・写真、文献、議事録等)に基づいた投稿をお願いします。事実の裏付けのない感情的なだけの投稿は掲載できませんので、あらかじめご了承ください。
 投稿先は管理人宛てです。

 将来の世代に残すにふさわしい持続可能な湖山池の環境を残すためにはどうすればよいのか、考えかつ行動するために皆様にこのサイトを活用していただきたいと思います。 (2013/02/21、 03/14に一部を更新  by 管理人)