「湖山池塩水化の生態系への影響」sub8-3 →「湖山池特設ページ「湖山池塩水化の生態系への影響」のトップへ →支部HPトップページへ −このページの中の写真・図・文章はご自由にお使いください。事前のご連絡は必要ありません。− |
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・「湖山池塩分濃度は、今どういう状態なのか?」('13/03/15) (1)2012年の湖山池塩分濃度の推移 このページの上にある「(3)参考資料」に示すように、鳥取市のHPでは湖山池の塩分濃度が公開されている。 鳥大の鶴崎研究室では独自に湖山池各所の塩分濃度を毎月定期的に測定しており、その値と鳥取市が公開しているデータ(資料1,2)を比較してみた。 なお、鳥大のデータは電気伝導度を測定してそれから全イオン量としての塩分濃度を計算している。一方、市のデータは塩分ではなく塩分の中の一部分の塩素イオンの濃度を測定している。両者を比較するため、塩分中の塩素イオンの比率を海水のそれとみなして(流入河川の塩分量は通常100ppm以下のため、湖山池の水の塩分のほとんどは海水に由来すると推定)、鳥大のデータを塩素イオン濃度に換算した。 信頼性のある科学データでは測定器を明記するのが常識だが、鳥取市のデータにはどこにも記載されていない。これでは測定器が途中ですり替えられても、データを見る側にはわからない。鳥大のデータには測定器と測定条件が明記されている。(下記の資料3を参照のこと) さて、両方のデータを、両者がともに湖山池の中で測定している唯一の共通ポイント「青島大橋」の測定値だけで比較してみた(図−1)。鳥取市のデータでは、橋以外のほとんどのポイントは池の中で採水し測定。船を持っていない鳥大グループのデータは岸べと橋の上から採水したデータである。 市HPのデータと鳥大のデータはおおむね同じレベルにあることが確認できた。鳥大のデータは水面から10〜15cmの位置での測定であり、鳥取市のデータは底層で採水したと記載されている。単に底層としただけでは測定ポイントが明確でない。「底から〇〇mで測定」というように測定ポイントを明確に定義すべきである。一般には水深が深くなるほど塩分濃度は上がるとされている。 資料1:鳥取市HPの塩分濃度データ(2012/06/10時点) 資料2:鳥取市HPの塩分濃度データ(2013/02/22時点) 資料3:鳥大鶴崎研の測定データ(2012年1月時点) 文献1:横浜市公害研究所報「コイの血液性状に及ぼす塩化ナトリウムの影響」 図−1 疑問点@:「湖山池将来ビジョン」で塩素イオン濃度の上限を5000ppmとした根拠はどこにあるのか? だれがこの値を決定したのか? さらに実際の塩分濃度の推移を見ると、4月初めから10月末までほぼ単調に増加し続けている。11月に7000ppm付近で飽和し、12月に入ってから人為的な水門操作によるものと思わるが急減し、最近は何とか5000ppmに収めようと努力しているらしい。県が一月に自ら定めた塩分濃度5000ppmを、半年後の七月には簡単に突破したにもかかわらずそのまま放置し、さらに最大7300ppmまでになった。 塩分濃度が上がり続けることを憂慮した筆者は、昨年十月始めにこれ以上の海水流入を即座に止めるようメールで鳥取県公式ホームページ中の「県民の声」に投稿した。数項目について質問しているが、塩分濃度に関する当方の質問と帰ってきた答えを以下に示す。 筆者の問い:「湖山池の水質における含有塩分の管理基準の数値はいったいいくらなのか?そして今年の夏のような高塩分を今後も許容するつもりなのか?」 (当時、私には塩分の最大値がどこに明示されているのか県のHPを見てもさっぱり判らなかった。しばらくして「湖山池将来ビジョン」に小さな文字で目立たぬように記載されていることをようやく知った。また県と市は、いわゆる「水中の全イオン量としての塩分」と、「塩素イオン濃度」とをしばしば明確な説明もなくともに「塩分」として表示して混乱を招いている。意図的にそうしているのかもしれない。) 県担当者の回答:「・・・次に、塩分の管理基準などについてですが、「湖山池将来ビジョン」では、ヒシやアオコの発生を阻害する塩分濃度を一つの目安として、塩分濃度を海水の1/10から1/4程度(塩化物イオン濃度で2,000〜5,000mg/L程度)と設定したところです。本年の夏の塩分濃度は、6,000mg/L以上となり5,000mg/Lを超えましたが、これは、連日猛暑が続き、空梅雨といった高温小雨の気象状態であったため、湖内の生物への影響の大きい貧酸素化を懸念し、湖水の流動を確保して貧酸素化を防止するための対処をした結果です。 したがって、本年の夏のような異常気象でない限り、今後は「湖山池将来ビジョン」に沿った塩分管理を行っていく予定です。・・・」 上の県担当者の回答では、「湖内の生物を貧酸素化から守るため水門を開放し続けた」とのことだが、塩分濃度が高すぎて湖内の従来の生物がどんどん死んでいる時に、いったいどんな生物を守るつもりだったのだろうか? また、「貧酸素化対策」を理由に上げているが、この言葉は市民アンケートには何も含まれていない。このように後で条件を付け足してルールを勝手に変えることを、「あと出しジャンケン」という。 さらに、2012年夏が猛暑・空梅雨の異常気象であったというが、次のグラフ (図−2) を見ていただきたい。気象庁のサイトにある過去の全国各地のアメダスの月別降水量から湖山の月別降水量を拾い出して2010〜2012年にかけて示したものである。 このグラフから、2012年の夏が異常に降水量が少なかったとどうしたら言えるのか? 図−1に示すように、池の塩分濃度は2012年7月に県が主張する塩分濃度上限値5000ppmをいとも簡単に越えてしまっている。 そこでその前後の6月、7月、8月の三か月の各年の合計降水量を調べてみた。結果は次のようになる。この期間に限ると、降水量は2012年が一番多い。 2010年 320mm 2011年 272mm 2012年 322.5mm 2012年よりも2011年の夏の方が渇水であるが、この年もその前の2010年もこの塩分導入事業の開始前であり、水門をコントロールして塩分濃度を1000ppm未満に抑えていたはずである。 「2012年は渇水のためにコントロールできませんでした」などと、県の責任のある立場の人が、口から出まかせを言わないでもらいたい。単にコントロールするつもりがなかったのである。これから毎年夏には、「今年も異常気象で・・」などと言うつもりなのだろうか? 少なくとも、水門を閉鎖しさえすれば海水の流入は大幅に減り、塩分濃度上昇の速度は著しく低下したはずである。図−1に見るように、5000ppmを超えても濃度がそれまでと同じ速度で単調に増加し続けたことは、管理責任者が塩分濃度をこの上限値以下に抑制する意思が全くなかったことを明確に示している。 疑問点A:自ら定めた上限の5000ppmを超えてもなんら抑制する意思がなかったのはなぜか?この責任は誰にあるのか? (2)市民アンケートの内容について 県と市は、この塩分導入事業は2010年11〜12月に実施した市民四千人に対するアンケート結果を参考にして実施したものだとしている。表向きは市民の意向を反映したように取り繕ってはいるが、アンケートで最も支持のあったとされているC案の上限値3200ppmが、一年後の「湖山池将来ビジョン」では何の説明もなしに勝手に5000ppmにすり替えられている。さらに実施に際しては、この5000ppmの上限値さえも全く無視されていることは今まで見てきたとおりである。 ここでは、結局は無視されることになったが、「湖山池アンケート」なるものの内容を検証していくことにしよう。なぜならば、このアンケートの内容そのものの中に、県と市の意図が明瞭に見て取れるからである。 実際のアンケートにおいて対象市民に配布された四つの選択肢を説明した表を資料5に示す。またこれを要約した表を表−1に示す。 資料5:市民アンケートで提示された説明資料 表−1 2010年11〜12月に鳥取市民を対象として実施されたアンケートの内容
・アンケートの結果(2011.08.22 県議会農林水産商工常任委員会資料より)
このアンケートの対象は湖山池周辺地区1000名、その他の地区3000名の鳥取市民と言うことであるが、湖山池周辺地区とはどこを指すのか、県の報道提供資料(資料5)には何の説明もない。 資料5: 2010.11.19付け 報道提供資料 皆さんはこのアンケートの内容を見てどう思われるだろうか。 ここでは回答の選択肢は、四通りの塩分濃度のうちのどれを選ぶかに限定されてしまっている。このアンケートが行われた2010年まで数年間にわたってヒシ回収作業が行われていたが、この選択肢の中にはヒシ回収を続行・拡大する案は含まれていない。ヒシ回収費用は鳥取市の負担で行われていたが、その金額は最大であった2010年でも年間で市予算が約300万円、県の予算が1500万円程度であった。上のC,Dパターンのような年間数億円の費用は必要ないのである。後ほどまた触れるが、県と市はこのヒシ回収の効果については全く非公開のまま、このアンケート実施に踏み切っている。 他にも、ヘドロ除去等さまざまな事業に過去多額の税金を費やしてきたが、その効果についての説明も全くない。なぜアンケートの内容を塩分濃度だけの対策に限定したのか、その説明もない。 さて、現在問題になっているのはヒシとアオコの異常繁殖であると最初に述べておいて、次にこの表を見せられたなら、湖山池の現状について知識や自分の意見をほとんど持っていない人であれば、大部分がCパターンを選ぶだろう。 「一番目はむかし実施したが問題があり、現在は二番目を実施しているがまだ問題は解消していない。三番目ではこの問題は解決するだろうが若干の別の問題 (ここでは赤潮) が出るかもしれません。四番目の案ではこの別の問題はもっと大きくなるでしょう。どれにしますか?」 と問われたら三番目を選ぶに決まっている。こういうのを「誘導質問」と呼ぶのである。新興宗教の勧誘や、くだらない商品を売りつける際によく使われる手口らしい。営業マンはこのアンケートの真似をして売りたい商品を三番目に置いてセールスをするとよい。きっと営業成績が飛躍的に上がるだろう。 このような誘導的な質問にもかかわらず、過去の、または現状の環境のままでで良しとするA,B案が合計で約三割あったことは鳥取市民の良識を示すものであると思う。 このアンケートを実際に受け取り回答した一鳥取市民が、当時のブログでその時の感想を述べておられる。ご本人の了解をいただいているので、この場でその全文を紹介したい。実際に回答された人も、明らかな誘導のにおいを感じ取っているのである。 「湖山池アンケートの問題点 2010/12/04」 水門開放した場合、淡水魚が生息困難及び海水が滞留し赤潮発生の危惧との記述があります。開放しても池全体が、海水とならず、淡水魚は淡水の部分にて生息可能。また伏野地区に水路をつくれば海水を循環させることができること。”湖水の農業利用は不可能”ー被害を受けたタバコはほとんど生産されていない。さつまいもには、若干潮が入った方がいいものができるという意見。また県と市が連携すれば農地の用途変更等によって、農地に対する23億円の費用は、圧縮できる。また今まで費やされたヘドロ除去、水質改良実験、菱の除去費用等は明示されていない。以上の点を指摘しました。 結論としては、今回のアンケートは、現在行われている水門を少しずつ開けているのを追認するためのもので、アンケートの回答をB(現在)、C(東郷池程度)に誘導するもので、血税の無駄使いと言わざるを得ません。 担当者が街に出て、聞けばいいのです。今の湖山池でいいのかそれとも美しい湖山池の復活か?100%の方々が後者を選ばれることでしょう。無駄な箱ものの記事が今日も地方紙に出ていました。政治主導とは、市民県民の願いを率先して実現することです。自然を守る鳥取。このことが将来の観光のそして教育の礎となります。」 なお、このアリバイ目的のアンケート実施の経費として、鳥取市の平成22年度9月補正予算で生活環境課が約123万円の予算を計上している。 (3)市民アンケートの各項目について 次に、この市民アンケートの各項目について、その記載が正確であるかどうかを見ていこう。 (a)ここ数年、アオコは異常繁茂していたのか? 筆者の記憶では、十年くらい前までは確かにアオコの量はかなり多かった。夏の間は湖面全体が緑色になり、ひどい年には晩秋の11月頃になっても波間にアオコが漂っているのを見たこともある。しかし、最近はアオコの量は減ってきており、以前ほど目につくことは無くなっていた。ちょうどヒシが繁茂しだすのに時期を同じくしてアオコは減ってきていたようである。 関連文献を調べてみると、ヒシとアオコ等の植物性プランクトンの関係を述べている文献があった。(文献2) (文献2:平成23年度(社)日本水環境学会中部支部講演会 於 福井市) この文献のP5に次のような記載がある。「三方湖では、水温が15℃以上になるとヒシが成長し始めるため、植物プランクトンの増殖は大きく制限される。(中略)これは、栄養塩の獲得競争において、ヒシの方が植物プランクトンよりも有利であるからだと考えられる。」 言い換えると、ヒシが繁茂すると植物プランクトンであるアオコは減少するのである。これは最近の湖山池の状況と符合している。最近はCOD等の数値は改善していないものの、湖山池漁協の実感としては、以前よりも魚が増えているという感触があったらしい。ヒシは単に腐って悪臭を放つだけの悪者ではなく、湖内の栄養分を吸収して成長し、魚に産卵の場を、さらに孵化した幼魚の隠れ場所を提供するのである。筆者はヒシが繁茂し出した2006年頃だったか、夏の終わりに福井展望所の近くでヒシの実を集めたことがあったが、ヒシの葉の下には小さなテナガエビの子どもがあちこちに何匹も隠れていた。「やっとテナガエビが帰って来たんだ。」とうれしく思ったことを覚えている。持って帰ったヒシの実をゆでて食べたら、ホクホクとまるで栗の実のような味でおいしかった。 湖山池の岸辺は、鳥取市当局による近年の過度な護岸工事によって水中の栄養分を吸収するヨシなどの水草が著しく減少し、周辺地区に下水道が普及しても水質が一向に改善しない状況が続いていた。最近増えてきたヒシはこの減った水草を補完し、湖内の水質を安定化する役割を担っていたものと推測される。 ヒシが十分育ったところで回収して陸にあげて堆肥などにすれば悪臭で問題になることも防げる。ヒシ回収に年間数百万円の予算ではなく、その二、三倍の予算を付けてさえいれば、環境保全も、漁業振興も、夏季のみの少人数ではあるが地元への雇用の提供も、全て両立出来たのではないだろうか。 2/19の要望書提出の際に、中山県生活環境部長は、「県民の利益が最大になるように整理していきたい。」と述べられたそうである。(上記(4)報道記事の中の2/20朝刊 毎日新聞鳥取版 を参照のこと) 県民の税金負担と、国と地方合わせて約950兆円にも及ぶ国債・県債・市債という名の借金を、さらに増やすことになる総額二十数億円にも及ぶこの事業をこのまま強行するのか、水門操作を継続して塩分濃度を2011年以前の状態に戻し、かつ年間二、三千万円程度で済むヒシ回収事業を再開するのか、どちらが県民の利益になるのかを県にはよくよく考えていただきたい。借金である国債や市債は、我々や子供たちが将来、今より格段に重い税金を払うことを前提として発行されているのである。今でさえどうしてこの借金を返すのか見当もつかない。どの政党も選挙公約ではこの問題にはあえて触れないようにしている状態なのに、これ以上さらに国、県、市の借金を増やすことは、我々の子どもや孫の世代に大変な重荷を背負わせることになる。 この福井県三方湖に関する文献では、鳥取県が湖山池に対して行ったようには、単純にヒシを敵視扱いはしていない。P2からはじまる吉田東大准教授のお話では、まず湖内の生物多様性の評価から始め、P3の図に見るように多くの段階を経て昔の主要魚種であったウナギとコイを復活させようとしている。ヒシを増やすか減らすかはこれらの検討段階を経てからの最終段階で決めることなのである。 ここに見られるのは、鳥取県・鳥取市のように行政があらかじめ勝手に筋書きを描いておいて、アリバイ的に住民を参加させて住民が合意したように見せかけるパフォーマンスとは真反対の姿勢である。まず対象とする生態系がどういう仕組みなのかを究明しようとする姿勢がある。その次に目的のためにはなにが一番有効なのかを住民参加のもとで検討しようとしている。鳥取では、特に鳥取市の場合、まず公共工事計画が決められて、そのつじつまあわせのためにその他の検討や言い訳を後で付け足しているように見える。 ヒシの話を続けるが、試しにネットで、「ヒシ」+「悪臭」で検索して見られるとよい。圧倒的に多いのは、この鳥取県湖山池に関する記事である。その他では、長野県諏訪湖の事例がかなりあるが、ここは悪臭問題をヒシ回収で解決しようとしている。今年の夏の諏訪湖での回収計画もすでに決まっており、あのトヨタもその事業を支援している。福井県三方湖では悪臭はあまり問題になっていないらしく、上に述べたようにヒシも含めた生態系の究明と漁業振興の両立を模索する姿勢が見られる。 どうやら、ヒシの繁茂を海水導入という生態系にとって極めて乱暴な手段で根絶しようとしているのは、日本ではわが湖山池だけのようである。 世界全体を見ても、少なくとも政策として生物多様性を重視するのが常識である先進国においては、自治体自らが水草の一種を根絶するためと称して、池を海に変えてそれまで生息していた池全体の生物を根こそぎ殺してしまうという、こんなアホな政策を実施した自治体は皆無なのではなかろうか。環境政策に関しては、日本の中では鳥取県だけが発展途上国レベルらしい。 湖山池のアオコの話に戻るが、近年アオコが本当にヒシの異常繁殖と時期を同じくして異常繁殖していたとするならば、それを数字で示す客観的なデータを提示するべきであろう。その検証がなければ、この市民アンケートの説明はウソを言っていることになる。 (b)B案に「畑作には支障がある」と書いてあるが、本当か? 湖山池の水をポンプでくみ上げてスプリンクラーで散布して畑作に使っていたのは、湖山池の北側の賀露・湖山・末恒地区、いわゆる湖山砂丘の砂地の畑である。この地区の主産物はサツマイモ、ニンジン、大根、ジャガイモ等である。以前はタバコ農家が多かったが年々減少、JT米子工場が廃止になったのを契機として数軒あったタバコ農家も他の作物に転換するか耕作放棄し、2012年以降はタバコを作付した畑を見かけることはない。他にハウス農家が数件あり、イチゴや花を栽培している。 これらの農家は元々供給される湖山池の水質にあう作物を以前から選んで栽培しており、長年同じ種類の作物を栽培していて特に問題はなかった。筆者は塩分に弱いとされているイチゴ農家の湖山地区にあるハウスを2010年3月に訪問したことがある。その農家は湖山池からの水は塩分が高いので、自分で井戸を掘ってそこから給水しているとのことであった。2010年末のアンケートが実施される以前の時点で、湖山池の水を使っている地区の農家の大半は露地栽培で雨水も併用していることもあり特に問題はなく、ハウス栽培で雨水が利用できず給水のみに頼りかつ塩分に弱い作物を作っている農家は、すでに自前で給水の施設を確保していたようである。 このように、実際には対象地区のほぼ全てと思われる農家がすでに(B案)の最大塩素イオン濃度1000ppmの水質に適応して営農している状況の中で、ことさら「畑作には支障がある」と記載したのはどういう意味か? 県と市が対象地区の農家の実情を知らなかったはずがない。 実際に営農している農家の利益のためではなく、県と市の都合に沿うように、回答を誘導したいためにこう書いたことは明白である。実際の市内の農家は従来の湖山池の水で十分と思っているのに、塩分導入したいためにあたかも問題があるかのように質問をすり替えて、現地の事情を良く知らない市民から自らが期待する回答を引き出そうとしている。 (c)A,B案に「農業維持のための畑地の送水施設が必要」と書いてあるが、送水施設は昔からすでにある。 また、そのための「畑地の送水施設整備等 8億円」っていったい何を買うつもりなのか? 上に書いたように対象とする畑地には、既に何十年も前からスプリンクラーによる湖山池からの水を引く給水系が完備されている。湖山池から水を引いてくるA,B案では、「送水施設はすでにある。」と書くべきなのに・・・。これもこのアンケートが誘導質問であることを示す証拠である。 送水施設はすでにあるのに、「畑地の送水施設整備等 8億円」とはいったいなんでしょうか?8億円のほとんどは「・・・等」の「等」の中にあるのかな? 少なくとも購入物品の明細と見積業者(少なくとも二業者による合い見積は必要!) の名前を示すべきである。こんな文章を黙認していると汚職を育てているのも同然ということになる。 (d)A,B,C案の「塩分調整のための水門改修等 3〜5億円」とは何か? 上の(c)と同じく、この「・・等」の内容の詳細はまったく不明である。 まずこの費用の詳細を明らかするべきで、なぜ改修が必要なのか、どんな装置をどの業者から見積もりを取ったかを明らかにすべきである。この費用は我々が苦労して払った税金であり、正しく使うことを条件として政治家と役人に仮に預けているだけなのである。市民への詳しい説明もないまま、彼らが勝手に使うことを断じて黙認してはならない。 (4)湖山池会議の経過について 現在の塩分導入事業は、鳥取県と鳥取市の部長以上の幹部9名からなる「湖山池会議」で決定されたものである。この事業の全責任は、この会議のメンバーとその上の知事、副知事、市長だけにあることが最初から明確になっている。 県の公開資料を使ってその経過を簡単にまとめてみた。上に見たように2010年末のアンケートの内容を決めた時点で、湖山池会議は塩分導入をする方針を決めていたと推測される。この時点までに三回の会議が開かれている。 この湖山池会議の不思議な点は、県の広報で開催日時が報道機関に提供されているのに、この会議の中での議論の内容や結論を直接公開している資料が一つもないことである。ネットで検索する限り、県議会の常任委員会に各担当課が提出する資料の中で「湖山池会議でこう決まりました・・・」と言及されている内容から推測するしかない。以下の表はそれらの資料と県・市の予算案、広報などから抜き出したものである。 ・第一回湖山池会議の構成メンバー
「日時」 「湖山池会議関連」 「その他の湖山池に関係する出来事」 2010.05.14 知事と市長の意見交換会 その他の会議を経て「湖山池会議」の発足に合意 第一回 2010.06.25 湖山池の将来ビジョンの策定に向け、市民協働推進ワーキング及び 水質浄化・生態系ワーキングを設置して検討することを決定 第二回 2010.08.11 ・住民に対するアンケート内容や意見交換会の実施方法の検討 ・湖山池の将来像パターンの検討及び水質浄化方策のとりまとめ ・繁殖の著しいヒシ除去対策に県・市で精力的に取り組むことの決定 等 2010.8月頃 2013年都市緑化フェアの鳥取市開催内定 ? (関連予算が県と市の9月補正予算に計上されている) 2010.09.09 ヒシ除去作業視察会開催 第三回 2010.10.29 ・市民アンケート内容や実施方法を決定 ・水質浄化施策の検討結果について確認 ・ヒシの刈り取り実績、効果について確認 等 2011.11.19〜2011.12.15 湖山池アンケートの実施 2010.8月の第二回会議まではヒシの回収も検討されている。しかし、2010.10月の第三回会議ではヒシの回収は結果報告だけとなり、アンケートの内容が決定され塩分導入がこの時点で事実上決まったことが判る。この間にあった大きな出来事は都市緑化フェアの鳥取市湖山池開催内定である。どうやら都市緑化フェアの開催内定が塩分導入を決定する大きな契機となったように見える。 この問題に興味をお持ちの方は、県のホームページの県議会のサイトから資料を閲覧することができます。ただし、肝心な情報の相当な部分が隠されているようなので、今のところ全体の流れを追うことくらいしかできませんが。 この問題を調べてみて感じたのは、少なくともこの事業に関しては、県と市の説明、やっていることが実にごまかしやすり替え、隠ぺいに満ちていることです。この湖山池塩分導入事業では、塩分濃度の問題に見るように、県と市の上層部は完全に市民・県民をナメている。 鳥取弁で言えば、「人をダラズにしとる。」 アザラシが海と間違えて入ってこないような昔のままの湖山池の環境を、テナガエビやワカサギが釣れる恵みの場としての湖山池を取り戻すように、引き続きこの問題に興味を持っていただきたいと思います。 (by 管理人) |